鍼というと刺してそのまま数本置いておいたり、鍼に電気を流したりと思われがちですが、意外と裏では細かなことをやっております。中には刺さない鍼や、ツボに対して数ミリしか刺さない「切皮」、皮膚に対し鍼先を接触させるだけの刺鍼方法などもありますが、これらはやられる分には気持ち良いけども、深部のコリや痛みにはあんまり効かないかなぁという個人的な印象があり当院ではあまり使いません。
当院の鍼灸スタイルはどちらかというと、打たれた人が「ソコです!」と感じるような(トリガーポイント)、切皮をしたあと目的の深さまで刺入して、しっかりと筋肉に当てる鍼灸スタイルなのですが、(もちろん強刺激だけではなく、個人個人に刺激量は調整します)、ここでは刺した後の、当院がよく用いる刺鍼テクニックをご紹介したいと思います。
切鍼をして目的の深さまで鍼を刺入したら直ぐに抜く方法です。比較的刺激の少ない(太さにもよりますが)刺鍼方法、または刺激量を調整しやすい刺鍼方法なので、鍼治療がはじめての方などによく用います。もしくは面積の大きい筋肉で硬結部分が広いため、鍼の本数が著しく増えそうな時などにも、この単刺を用います。
先ほどの単刺は目的の深さまで刺したら直ぐに抜くという刺鍼方法でしたが、置鍼は目的の深さまで刺入したら、そのまま一定時間置いておきます。置いておく時間は様々ですが、おおよそ5〜10分、長くても15分位です。このあたりは鍼灸師によって多少前後すると思いますが、置鍼最中は当然体を動かせないので、あまり長い時間、置鍼をされると個人的には結構しんどかったりします。
そのため当院では、置鍼最中は患者さんの直ぐ近くに待機して、お体が辛くなってないか、小まめにお声がけをいたします。
雀啄は鍼先を目的の深さまで刺入または刺入しながら、小刻みに鍼先を上下に進退させる方法です。雀(スズメ)という字のごとく、雀がエサを啄む(ついばむ)ように小刻みに数回、鍼を上下します。当院ではこの雀啄は使用頻度は多いです。単刺だけでは物足らず、それでいてもう少し刺激を加えたい時などに丁度良く思います。しかし僅かながら鍼先を上下に進退させるので、組織を傷つけ過ぎないよう、速度はゆっくりと、且つ小刻みに行います。個人的なイメージですが、硬くなった筋膜・筋繊維を鍼に絡めてソフトにほぐすような感じです。打たれている方は雀啄を加えると、「ズンズン」や「ツンツン」という刺激を感じます。
刺入するときや鍼を抜くときに鍼を左右どちらかに回旋させる方法です。単刺よりも少し刺激量が増えます。ただ回転させれば良いというものではなく、左右同じ角度で回転させます。
鍼を左右どちらか一方に回転させながら目的の深度まで刺入します。鍼を抜くときは刺入とは反対の回転で抜鍼します。
鍼を目的の深さまで刺入したあとに、刺した鍼の周囲の皮膚をトントン軽く叩いたり、軽く揺らしたりする方法です。上記の回旋や旋撚は正直あまり使いませんが、この副刺激術は健康な頻度でつかいます。しかしやりようによっては刺激過多になりますので、揺らすにしても極軽くゆっくりと、患者さんの反応を見ながら行います。
その他にも、間歇術・屋漏術・振せん術・随鍼術・内調術・細指術・管散術・低周波鍼通電療法など色々御座いますが、当院ではあまり使用頻度はありません。最初の段階で目的の場所(トリガーポイント)にしっかり当てることが出来ることをより強く心がけております。 加えて当たり前ですが、患者さんの反応を見ながら、それは声かけだけでなく、刺している部位の反応、その他お身体全体の反応などをみながら丁寧に行うのが一番かなと個人的に思います。